ドSなあなたへ、仰せのままに。
「っていうか、慎重高いね!何センチ〜?」
「この前測った時は166センチだーー……」
昼休みが始まって5分、みんなと打ち解けて5分。
新しい生活に嬉しさ全開で胸が高鳴っていたその時だった。
スカートのポケットに入れていたスマホが、通知音を鳴らした。
「どしたの?」
突然話すことをやめた私のことを不思議に思ったのか、メイちゃんとユウカちゃんが私の顔を覗き込む。
「あ、ちょっとごめんね、連絡が入っちゃって」
私は、挙動不審にならないようにとなるべく冷静に、そして急ぎながら立ち上がって、教室の外に出る。
案の定、スマホのディスプレイには新着メッセージ。
そして、送り主はーー……。
"Kou"
私が仕える主人、南航とは、出会った初日に半ば無理やり連絡先を交換させられた。
本人曰く、「いつでも呼び出せるように」らしいが……。
きっとこの連絡先が使われるのは、緊急の時なのだろうと思っていたけど、まさかこんなにすぐ使われるなんて。
まさか、何かあったの……?
急いでトークアプリを立ち上げて、彼からのメッセージを開くと、そこには淡白な一文。
"3年1組、早くしろ。"
気づけば私は、事前に把握しておいた校内地図を頭に思い描きながら、即座に3年1組までの最短ルートを走り出していたーー……。