【1話だけ大賞】この歪んだ愛は狂気
この歪んだ愛は狂気


「先生……どうしてこんなこと、するんですか……?」

 私は目の前にいるその人に、そう問いかける。

「なんでって……。君が悪いんだよ、君花(きみか)

「え……?」

 この状況になったのは、つい昨日のこと。 
 今の私に起きている状況は、簡単に言うと【監禁】だ。
 私を監禁しているこの人は、私が通う高校で生物の教師をしている金畑(かねはた)先生だ。

「先生、なんでこんなこと……。私、先生に何かしましたか……?」

 まさか先生に監禁されるなんて、思わなかった。どうしてこんなことになっちゃったんだろう……。
 
 私は恐らく先生の部屋であろう場所で、ベッドの上で両手をベッドの柵に通された手錠を掛けられ、監禁されている。
 
「君花、君には僕という人がいるのに、どうしてアイツと付き合ってるんだい?」

「え……? なに、言ってるんですか……?」

 金畑先生は私に近付くと、私の髪の毛に厭らしく触れてくる。

「君花、君にはあの男は似合わないよ」

「先、生……お願いだから、私を解放してください!」

 私は先生にそうお願いしたが、先生は聞く耳を持ってくれない。
 
「ダメだよ。君花が僕のものになるまで、解放は出来ない」

「どうして……っ」

 私は先生ものになるつもりなんてない。それに、私は先生と付き合ってるつもりもないのに……。

「先生、なんでこんなこと……。おかしいよ」

「おかしい? おかしいのは君だろ?君花」

「え……?」

 私がおかしい……? 違う。おかしいのは先生の方だ。

「君には僕しかいないだろ? なあ、君花?」

「ちょっと、待ってください。……先生、私は先生とこんな関係になることなんて、望んでないんです……」

 私がそう話すと、先生は「そんな訳ないだろ!」と私を怒鳴り付けた。

「っ……!」

 私はいきなり先生が怒鳴り付けたことにビックリして、ビクッと身体が震えた。

「君花、君は僕に言っただろ? 先生のことが好きだって」

「え……?」

 先生のことが好き……? 私、そんなこと一言も言ってない。

「わた、し……そんなこと、言ってません……」

「いや、君は言ったよ。僕に確かに言った。僕のことが好きだと」

「ちがっ……私、そんなこと、言いません……」

 先生は、何か勘違いをしている。 私は先生にそんなことを言った記憶なんてない。

「君花、君は僕のものなんだよ。……誰にも、渡さないよ」

 先生がベッドの上に乗ってきたことで、ベッドがギシッと音を立てている。

「や……やめて、ください……」

「君花、アイツと別れないと僕は怒るよ」

 アイツ……? え、なに言ってるの……?
 アイツって、誰のこと……?

「な、なに、言ってるのか、わかりません……」

 そもそも先生の言うアイツとは、誰のことなのかもわからない。
 
「わ、たし……誰とも付き合って、ません」

「君花、君は何を言ってるんだ? 付き合ってるんだろ?西城(にししろ)と」

「え……?」

 西城くんと私が付き合ってる……? ううん、付き合ってない。
 一体、先生はなにを勘違いしてるの……?

「聞いたんだよ、君花が西城と付き合ってるって」

「いや、私……付き合ってません!」

「本当に? 本当に付き合ってない?」

「付き合ってません……!」

 金畑先生の私を見るその目が、怖くて怖くて仕方なかった。
 これが恐怖なのか、それとも絶望なのかもわからない。 
 先生の家に監禁されて、動くことも出来ない私が出来ることなんて……ない。

「先生、お願い……離してください」

「ダメだと言っただろ。君が僕のものになるまで離さないと言ったはずだよ?」

 先生の私を見るその目が怖くて、それ以上何も言えなかった。
 ただひたすら、早く解放されるのを待つしかないんだなと悟った。

「さあ君花、僕のものになるんだ」

 先生が私の頬に手を伸ばして厭らしく私に触ってくるから、吐き気がしてくる。

「いやっ……ならないっ!」

 逃げたいけど、両手を手錠掛けられているせいか、身動きすら取ることが出来ない。

「なぜだい? 君は僕のことが好きなんだろ?」

「先生、私……先生のことなんて好きじゃありません。だからお願いです。……手錠を、外してください」

 涙目になりながら先生に訴えるが、先生は「いいね、その僕を見るその目。たまらないね」と厭らしい微笑みを浮かべている。

「さあ、君花。僕にどこから触れてほしい?」

「え……?」

「答えて、君花。どこから触れてほしい? 髪の毛頬?……それとも、そのぷっくりとした唇?」

 先生がそう言いながら、私に一歩一歩と近付いてくる。

「や、やだっ!来ないでっ……!」

 逃げたいけど、手錠のせいで身をよじることしか出来ない。

「そんなに怖がらなくていいんだよ、君花。 君には、優しく触れてあげるから」

「や、やめてっ……お願い、やめて……」
 
 た、助けて……。誰か助けてっ……!!

「君花、そんなに泣きそうな顔をしたってムダだよ。……君はもう逃げられないんだよ、君花」

 私の上に跨がってくる先生は、涙を流す私に「泣かないで、君花。 大丈夫だよ、優しくしてあげるから」と私の涙を拭う。

「や、だっ……」

 助けてっ、助けて……。

「さあ君花。君はこれから僕のものだ。もう逃さないよーーー」



【1話だけ大賞完】
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