女帝は道化師に愛される
 考え始めて、数秒。

止まったかのように思えた時間が、押し寄せた波のようにバッと進み出す。

その言葉が現実味を帯び始め、感情が大きく乱れる。

それと同時に、焦りと失望が私の心を満たし始める。

 口の中には怒りが広がり、目には悲しみが滲んだ。

 「な、何言ってるの!?私は虐めてなんかない!」

 今になって、醜く嘆き出す愚かな私。

私が叫ぶようにそう訴えかけても、ユウヒは顔を伏せて暗く呟くだけ。

 「ごめん。ユリ。ただ、俺は総長として、、、こうする他、なかったんだ」

 「、、、っ!」

 その一言で、目頭が更に熱を帯びる。

 こうする他なかった、、、?私を捨てるしかなかった?

なにそれ。そんな言い訳、自分を正当化したいだけでしょ?


 違う。違うと言って。私は被害者なのに。なぜ嘘つきの彼女を信じるの?

おかしい。何処かの歯車が狂ったかのようだ。

 今までの完璧で平穏な日々の先が、一気に見えなくなる。

先ほどまであった余裕も消え失せ、後悔と屈辱が心を蝕む。

 余裕ぶっこいて、冷静にあしらった結果だ。

いや、それ以前に彼女の密告による被害だが。


 「総長、賢明な判断です。この小娘を今すぐここから放り投げましょう」

 「ほら見ろ!ユリが悪いんだ。サクラが正しいに決まってる」

 「、、、」

 「ユリちゃん。私は、、、ユリちゃんのこと、許せない。」

 ミヤビはユウヒを褒め称え、ヨウは私を見下す。

そしてサクラはさも自分が心優しき少女のように言い張り、ヤユは何も言わなかった。
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