女帝は道化師に愛される
　野蛮な音から自然な音まで響く路地裏、足をそちらへ近づけていく。

最初は見つからないようにと慎重に歩いていたが、どんどん速度は速くなる。

状況を把握したいという好奇心に駆られながら、足を早める。

　今は裏切られ、気分が最悪な状態なのだ。

人を殴って、見下して、もっと最悪な気分になってさっきの事から目を逸らしたい。


　そんな思いで、最後は走りながら取っ組み合いをしている男の脇腹に蹴りを入れる。

すると突然横から現れた私に対応できずに、情けなく体制を崩す。

バシャンッと大きな体を水溜りにぶつけた、厳つい顔立ちの男を見る。

　「、、、なにしてるの？」

　「は、、、？突然入ってきてなんだよお前っ！」

　
　私が静かに聞くと、倒れた男はこれまた耳をつんざく様な怒号を出し、立ち上がる。

そして私に殴りかかろうとしたところを、ヒョイっと容易く躱す。

それだけで私を見失った男の股間に蹴りを入れれば、醜く倒れのたうち回り、意識が飛んだ。

　スニーカー越しに感じた感触に気持ち悪さを覚えながら、倒れた男に唾を吐く。

汚い。私にこんなことをさせるな。
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