元姫様はご臨終

損はさせない契約

 「で、私に何を求めてるの?」

 私が生ビールを口に含みながら話を切り出すと、道化師は小さく笑った。

 今、私たちは近くにあったうるさい酒屋に来ている。

酔っ払いが集まっているおかげで、喧騒があちこちで渦巻いている、雑多な場所だ。

 そんな中、個室席で焼肉を焼く目の前の男、(ヤナギ)はこう言う。


 「さあ〜?後で話すよ。はい、タン」

 手前の小皿に肉が置かれたので、遠慮なしにそれを割り箸で掴む。

口に入れてみたところ、上質ではないようだ。硬いし匂いは変だし不味い。

ヤナギも不器用なせいで、生焼け気味の肉はより一層不味かった。

レモンを一絞りしてみるが、それでも不味い。

 ビールで口直しをしていると、ヤナギはこちらを見つめてくる。

どうやら人に肉を焼いてばかりで、自分は何も食べていないようだ。

探るような視線が気になり、目つきを悪くしながら聞く。
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