元姫様はご臨終
 私が嶺春(れいしゅん)の仲間の可能性も捨てきれないというのに。裏さえ感じてしまう簡素な理由。

 しかしそんな質素で浅い理由が、一番しっくりくる。

彼は人を見る目がある。ナルシストのようだが、私は彼に求められるほどの価値があると自覚している。

そして彼は私の内なる実力を見抜いた。それは才能だ。


 そんな簡単で奥深くもない彼の理由が、私はとても気にいった。

彼には、価値がある。そう私が告げている。ならば、それに従うのみだ。

 「わかった。付き合ってあげる。私も嶺春が目障りだったからね」

 そう言いながら、タッチパネル式のメニューに生を一つ追加する。

交渉は成立だ。私にも利益があるし、彼にもある。ウィンウィンの関係。


 「ありがとう、、、あと、頼みすぎじゃない?」

 目の前のヤナギが礼を言うと共に、金額を心配する。

しかし、奢ると言い出したのはそちらだ。私は遠慮しない。

食い意地を張りながらも、ヤナギの焼いてくれた肉をバクバクと食べ進めていく。

 ビールも飲み、ヤナギの出費を嵩ませてやる。

そして会計の頃には、レジに『合計3万5080円』の文字列。

「食べ放題なはずなのに、、、」と呟くヤナギを無視しながら、スマホをいじる。

これからも何かを奢ってもらうとしよう。
< 27 / 57 >

この作品をシェア

pagetop