女帝は道化師に愛される
 少し前を歩くヤナギの背中を見ながら、そう考える。

ヤナギは計算高く、賢い人間。

そんな彼だからこそ、こんな高層ビルを用意できる。


 はあ、と重めの溜息を一つ出し、歩みを早める。

そんなに賢い彼は、私の本性を見抜いているのだろうか。

そんな不安に駆られながら、ヤナギの隣に立つ。


 ここから見える横顔は、やはり人間とは思えないほど綺麗なものだった。

私は、こんな未知なる怪物を仲間につけたのか、、、

安心と不安が同時に心を襲う中、ヤナギの案内通りに最上階へと向う。


 二人で近くにあったエレベータに乗り込み、60階を目指す。

ヤナギはスマートに60と書かれたボタンを押し、私に確認を取る。

 「ユリって高所恐怖症じゃないよね」

 「恐怖症はない」

 「OK」

 そんな短い会話を交わしていると、エレベーターが上に登り出す。

床のグワンッという感覚が少ししかない事に、地味に感動した。
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