女帝は道化師に愛される
 そして60階まで上がるとチンッという小さな音が鳴り、扉が開く。

すると真ん前にはすでにガラス張りの部屋が広がっており、玄関などはないという事が窺えた。

エスカレーターから直で広がっているとは、、、便利だな。

 扉を開けなくても良いという事に感心しながら、中に足を踏み入れる。


 壁は全てガラス張りで、都内を一面見渡すことができる。

まだ昼間の都内は、小さな群れとなったビルが灰色に輝いている。

そして肝心の内装は、ほぼ殺風景。

白い床とシンプルなシーリングファンがくるくると回っている。

あとは木製のとてつもなく大きな机が一つと、添えられた椅子が二つ。

脇側に黒い皮ソファと、小さいテーブル。

カラフルなクッションが三つに、ミニ冷蔵庫が一つ、、、だけ。


 とてつもなく大きい部屋は、仕事用デスクが何十台も置けるほどの広さというのにも関わらず。

置いてあるのはたったこれだけ。

コートをかけるポールハンガーがちょこんと近くに立っているが、それだけで家具が沢山あるようには見えない。

 ここで不良たちが騒ぐ!と言われても、あまり想像ができない。

皆でコーヒーを啜っている方が、安易に想像ができてしまう。
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