女帝は道化師に愛される
 自己肯定感が低いのか?と思いながら、近くにあった皮ソファーに腰を下ろす。 

こちらも十分と上等なもので、申し分ない座り心地だ。

ただ、目の前で突っ立っているヤナギを見ると、余計不安になる。

 彼の並外れたルックスにこの殺風景な部屋だと、なんだか儚い雰囲気になってしまう。

今にも神秘さで消え去ってしまいそうだ。神々しくて直視できないし。


 やはり、この部屋はヤナギと相性が悪い!

心の中で太鼓判を押しながら、ヤナギに隣へ着くよう促す。

近くにいてくれた方が、こちらも安心できる。

 「こっち来なよ。今にもホログラムになって消えそうで怖いから」

 「僕は消えないよ。というか、家具って何揃えれば良いのさ、、、」

 グチグチと不満を垂れながら、私の隣に座るヤナギ。

そんなに嶺春と比べられた事が屈辱的だったのだろうか。

別にそこまでいじけなくていいのに、、、

 案外落ち込んでいる彼に一瞬驚くが、彼はそういう奴だったと思い出す。

喜怒哀楽が無駄に激しい、変な奴だった。

よくはしゃいでいるから忘れかけていたが、悲しみも怒りもあるのだ。

まあ、それが彼の本性かは知らないが。
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