女帝は道化師に愛される
桜を踏み躙れ


 「、、、ユリ」

 「やめてよ、名前呼びなんて。気持ち悪い」

 目の前に立つ男、ユウヒに嫌悪感全開で話しかける。

ここが人の少ない廊下でよかった。誰にも見られないで話せる。

 不機嫌に腕を組み、貧乏ゆすりをした。

ユウヒを取り戻す気ではある。でも好きという訳ではない。

私を信じなかった男だ。そんな間抜けを愛せるような心は生憎持ち合わせていない。

 
 それにしても、彼の隣にいる女もまあよく私の前で立てたものだ。

ユウヒさん怖いっと貧弱アピールをするかと思ったが、震える両足でしっかりと自立している。

 まるで生まれたての子鹿の様だ。

なのに一丁前に私をキツく睨みつけ、涙をこらえるフリをしている。

 お菓子の国のお姫様は、何処に行った。

今ではその見る影も無い。傲慢で欲張りな女王様の様だ。


 そして私は、そんな女王様が嫌いだ。

 「随分と生意気になったみたいだね、サクラ」

 私がそういうと、桜色の髪色をした少女は震える声でこう返した。

 「そっちも相変わらずだね、ユリちゃん」
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