波間に揺れる白い星

新しい暮らし






「はぁ……暑い……。」

 


恭介(きょうすけ)はキャリーバッグの取っ手を握りしめながら、玄関先で立ち尽くしていた。



目の前の古びた木造の家は、いかにも沖縄らしい赤瓦の屋根と白い壁で囲まれている。



青空に映えるその姿はどこか絵画のようだったが、慣れない暑さのせいで感傷に浸る余裕などなかった。




「なんで俺だけ…短期移住で知らない人と住まなきゃ行けないんだよ、親父たちはホテルに泊まっちゃってさ…」



「恭介くんだよね?これで荷物は全部?」



不意に声をかけられて顔を上げると、そこには少女が立っていた。


彼女は白いワンピースを着ていて、長い黒髪が肩から風に揺れている。


「え、あ、はい。これで全部です。」


慌てて返事をした恭介の声は、少し裏返っていた。


目の前の少女は、美咲(みさき)と名乗るこの家の住人だった。


「よかった。それじゃあ、こっちにどうぞ。」


美咲は小さく微笑みながら家の中を案内してくれた。


その控えめな笑顔に、恭介は一瞬で視線を奪われた。







< 1 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop