白波銀行おひとりさま女子事情
第1話

#プロローグ



幼い頃、「将来の夢はなんですか?」と訊かれたら、私は必ず「お姫様」と答えていた。

そう答えると、大人はみんな『花嫁さん』のことだと思ったようだけど。

私がなりたかったのは、花嫁さんではなく『お姫様』だ。

お屋敷と呼ばれるような広くて大きな洋館に住んで、レースがたくさんあしらわれた可愛いドレスを着て、専属のメイドと執事がいて、「お嬢様」と呼ばれて過ごす。

仕事なんてすることもなく一生を優雅に自由に遊んで暮らす、そんなお姫様生活にとても憧れていた。

いつか、そんな暮らしができると信じていた。

だけど、それは子供の無邪気な幻想でしかなかった。

「いい? 今は女性も働いて当たり前の時代だからね。女性は結婚して家庭に入ればいいって考えじゃ甘い。しっかり勉強して就職して、自立した女性にならなくちゃダメよ」

まだ世間のことなんてなにひとつわからない子供の頃に、何度も言われてきた言葉。

物心ついた時には、父親は家にいなかった。

私には父親の記憶がほとんどないけれど、両親は私が生まれてから価値観の違いで言い合いになることが多く、離婚したらしい。
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