白波銀行おひとりさま女子事情

笑いながら冗談でそう言った舵原さんだけど、表情が一瞬翳ったように見えたのは私の気のせいだろうか。

「間もなく西ヶ丘駅です」

タイミング良く聞こえてきた車内アナウンスに、お互い話を止めた。

「じゃあ、今日はありがとう。また今度の勉強会で」

「こちらこそありがとうございました。お疲れ様でした」

ドアが開くと、舵原さんは私に手を振って電車を降りた。

ひとりになった私は、いつものように鞄からスマホを取り出して“ときめきデイズ”のアプリを起動する。

『おかえり。今日も一日頑張ったご褒美、あげる』

画面の中、"おかえりのキス"をしてくれた拓海くんの顔がふっと舵原さんの顔に重なった。

舵原さんは……私がゲームに夢中だと知ったらどう思うだろう。

やっぱり “イタイ女子” だって思われてしまうのかな。

そう考えたら、なんとなく虚しい気持ちになった。

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