白波銀行おひとりさま女子事情

ふたりで話しながら、改札に入ったその時。

「清水?」

聞き覚えのある声がして振り返ると、

「舵原?」

まさかのタイミングで舵原さんがいた。

「なんでここにいるの?」

「今日、ちょうど海南支店の担当の日だったんだよ」

「……そうなんだ。すごい偶然だね」

あれ? なんかちょっと清水さんの様子が変?

笑顔がちょっとぎこちないような……。

と思ったら、

「あ、電車来てる! じゃあ、またね!!」

清水さんは電光掲示板に表示されている時間を見てそう言うと、慌ただしくホームへ続く階段を上って行ってしまった。

「帰ろうか」

舵原さんが、清水さんの姿を見送りながら苦笑交じりに言った。

「水野さんの地元、花井沢だったよね」

「あ、はい」

ちゃんと覚えててくれたんだ。

そんな些細なことが嬉しくなる。

ふたりで電車に乗ると、ちょうど帰宅ラッシュ時で、車内はかなり混雑していた。

「大丈夫?」

「……なんとか……」
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