白波銀行おひとりさま女子事情

清水さんは、舵原さんの気持ちに気づいているのだろうか。

“頼るっていうか、利用してるの間違いだと思うけどな、あれは”

前に飲み会の帰りに舵原さんが言っていた言葉を思い出す。

あの言葉の意味は、もしかしたら――

「新人の頃はよくお客さんに怒られて泣いてたけど、タフになったんだな」

「そうなんですか?」

「うん。ああ見えて、清水もけっこう悩んでたから」

私が知る限りでは、清水さんが仕事のことで落ち込んで泣いているところは見たことがない。

そんなに何回も泣くほど落ち込んでいたなんて思わなかった。

つまり、舵原さんの前ではそれだけ弱いところを見せていたということだ。

清水さんが職場でいつも明るいのは、いつも話を聞いて励ましてくれる舵原さんがいてくれたからかもしれない。

だけど、それは舵原さんにとっては残酷なことだったはずだ。

優しいから、突き放すことができなくて。

本当の気持ちを心の奥にしまい込んで。
< 109 / 135 >

この作品をシェア

pagetop