白波銀行おひとりさま女子事情

「これからもいい先輩として頑張ってほしいな」

そうやって、笑顔を浮かべる。

彼の想いを確信した今、その言葉はとても悲しく私の心に響いた。

胸の奥、かすかに感じる小さな痛み。

それは、舵原さんの想いに気づいてしまったから…?

それとも、自分の気持ちに気づいてしまったから…?


* * *


一月は行く、二月は逃げる、三月は去るというけれど、三月は年度末だけあって毎日とても忙しい。気づけばあっという間に月末を迎えた。

「臨時夕礼を行います。ロビーに集合して下さい」

PCで今日受けたお客さんの折衝記録を入力していると支店長の言葉が聞こえて来て、一瞬にして営業場が緊張感のある空気に変わった。

このタイミングで臨時夕礼が行われるということは、恐らく誰かに異動の辞令が出たということだ。

私はまだ三年目だし特に支店長からも呼び出されなかったから確実に違うけど、もしあるとするなら……。

なんとなく感じた不安を抱えながらロビーへ向かう。
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