白波銀行おひとりさま女子事情

「で、さとちゃんはどうよ?」

「はい!?」

ぼんやりしながらふたりの話を聞いていたから、突然名前を呼ばれてビックリした。

まさか再び振られると思わなかった。

「私はそういうのってよくわからないです」

知ったかぶってもしょうがないし、もう正直に答えよう。

「あれ? さとちゃん彼氏いなかったっけ」

「いないです」

「そっか。じゃあ、好きな人は?」

「……え……」

“好きな人”と言われてすぐ頭に浮かんだのは、Neo Moonの涼夜。

だけど、「好きな人は芸能人です」なんて、この年で言えるわけがない。

そんなこと言ったら、ドン引きされるに決まっている。

「……いない、です」

ウソではないのでとりあえずそう答えると、

「あ、今答えるのに間があった! あやしい!」

隙を逃さず清水さんが言った。

「ホントにいないです!」

「そういう人ほどいるんだって。誰?誰? うちの支店の人?」

清水さん、早くもお酒が入っているせいかちょっとテンション上がってきてる。
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