白波銀行おひとりさま女子事情

ひとり心の中で妹に対するコンプレックスを感じていた時。

海輝が言いづらそうに切り出した。

恥ずかしそうに視線をテーブルに落としたまま “何か” を言おうとしている。

その何かが、海輝の様子を見てなんとなくわかってしまった。

聞きたいけど、聞きたくない。

だってもしも私の予想が当たっていたら……。

そう思いながら、わざと明るい口調で言ってみた。

「もしかして彼氏出来た?」

「……! なんでわかったの?」

海輝が勢いよく顔を上げて尋ねた。

「なんでって、なんとなく?」

おどけてそう言いつつ、心の奥では何とも言えない感情が燻っていた。

ずっと、自分と同じおひとりさまだと思っていた海輝に、ついに彼氏が……。

おめでたいことなのに、心底祝福できない自分がいる。

「どこで知り合ったの?」

「えっと……会社の飲み会、なんだけど。二つ上の先輩なの」

「そっか。良かったね」

平静を装ってそう言いながらも、妹だけじゃなく親友にも先を越されたという事実に、私は内心かなりショックを受けていた。

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