白波銀行おひとりさま女子事情
圧倒的な女性職場であるうえに、定年間近の男性しかいないこの職場では、河野くんは新人男性社員と言うだけでアイドルなのだ。
「やっぱり若い子がいると、空気が変わるわよねぇ」
パート勤務の石田さんが弾んだ声で言う。
「なんかフレッシュな風を感じますよねぇ」
岬ちゃんがしみじみと呟いたその言葉に、「今年三年目のあなたもまだ充分フレッシュでしょうが!」と内心突っ込みを入れてみる。
こうして、いつもと少し違う空気の中、今日もいつも通りの仕事が始まった。
九月は決算期ということもあり、全体的に忙しい。
次から次へとお客様の対応や書類確認に追われているうちに、あっという間に一日が終わった。
「お疲れ様です~」
更衣室で着替えていると、岬ちゃんが入ってきた。
残業で疲れているはずなのに、テンションが高い。
やっぱり年齢的なものかな……なんて思っていたら、
「今日から研修に来てる河野くん、なかなかイケメンですよね~」
嬉しそうな笑顔で岬ちゃんが言った。