白波銀行おひとりさま女子事情
確かに、それだけと言われてみれば、それだけだ。
電話した時にたまたま職場の女性と一緒にいた。
それはとてもありふれた出来事で、それだけではもちろん浮気とは言えないと思う。
だけどきっと、すぐに自分の目で確かめられる距離にいないからこそ、それだけのことでも不安になってしまうのかもしれない。
「“愛があれば距離なんて関係ない” なんて、ただの綺麗事だよね。ホントはすぐ会えない分、ちょっとしたことでもすぐ不安になるし、嫉妬しちゃう。遠距離になる時に覚悟してたはずなのに、心狭いよね、私」
そう言って自嘲気味に笑う清水さん。
彼女がこんなに落ち込んでいるところを初めて見た。
いつも気さくで明るくてみんなの人気者で、仕事も恋愛も順調な憧れの先輩。
だけど、清水さんだって本当は笑顔の裏でたくさん悩んで苦しんでいるんだ。
そんな当たり前のことに、今さら気がついた。
「何かあったら、いつでも遠慮しないで話して下さいね」
ありきたりな励ましの言葉しか出てこなくて、申し訳ないけれど。