白波銀行おひとりさま女子事情

「今日はエリア長ギャフンと言わせてやります!」

気合いたっぷりにそう言った清水さんと一緒に電車に乗った。

まだ帰宅ラッシュ前の電車内は人が少なく静かだ。

いつもの癖でスマホをチェックすると、どうでもいいメルマガしか来ていなかった。

なんだかなぁ…なんて思っていると、「あのね、さとちゃんに話しておきたいことあるんだけど」と、突然清水さんが話を切り出した。

「え?」

珍しくちょっと改まった清水さんの口調に、顔を上げる。

話しておきたいことってなんだろう?

私、仕事で何かやらかした?

「さとちゃん、今良くないこと考えたでしょ?」

からかうように笑いながら清水さんに言われて思わず「はい」と頷くと、「いい話だから安心して」と今度は優しい笑顔で言ってくれた。

「実はね、私……」

清水さんはいったんそこで言葉を切って。

「……結婚するんだ」

少しの沈黙の後、意を決したように言った。

へぇ、結婚するんだ。マジッすか。マリッジすか。
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