白波銀行おひとりさま女子事情
「おはようございます。朝礼を始めます」
午前八時三十分、開店前の朝礼が始まる。
前日の業績報告や今日の予定を確認して、「本日もよろしくお願いします」の一言で今日一日の仕事が始まる。
朝礼が終わると、「あ、山崎さん。今日のアポの確認なんだけど」と早速仕事モード。
当たり前だけど、職場の皆は今日が私の誕生日だなんて気づいていないというより知らないだろう。
だから何事もなかったかのように仕事の話が始まる。
別に祝ってほしいわけじゃないし、もう「おめでとう」と言われて素直に喜べる年齢でもないから、いいんだけど。
開店前、私は朝一番で来店するお客様の資料の準備に入った。
瀬戸さんという七十代の品のいい女性で、この支店に異動した直後から担当している顔なじみのお客様だ。
「私の孫もあなたと同い年なのよ」と言って優しく話しかけて下さって、私が書類の不備を出してしまった時も、「そうやって失敗してひとつずつ覚えていくものよ」と温かい言葉を下さった、とても優しいお客様。