白波銀行おひとりさま女子事情
「ありがとう。実は、このこと話したの、職場ではさとちゃんが最初なの。もう少ししたら支店長と課長に言うつもりだから」
「そうなんですか?」
「うん。だから、まだみんなにはナイショね」
そう言って唇に人差し指を当てた清水さんの笑顔は本当に幸せそうで。
そんな幸せな報告を最初に私にしてくれたことが、とても嬉しかった。
ハッピーな気持ちのまま、いつも通り勉強会の会場となる海南支店へ向かう。
会議室で配られた資料には、相変わらず数字大好きなエリア長が作ったと思われる支店別業績表。
でも、ボロボロに言われた前回と明らかに違うのは、我が美浜台支店の業績。
最下位だった順位は、見事三位まで浮上している。
「美浜台支店は最近成約数もかなり上がってますね。ぜひこの調子で頑張って下さい」
案の定、エリア長は上機嫌な笑顔でそう口にした。
この手のひらの返しぶりはなんなんだろう。
「店として営業している意味がない」とまで言っていたくせに。
「“頑張って下さい” じゃなくてギャフンって言えっての」
隣で清水さんが小さくそうつぶやいて、思わずふたりで笑ってしまった。
でも、“美浜台支店は業績が悪い” っていうイメージはこれで払拭できたと思う。