白波銀行おひとりさま女子事情

一番聞きたくない言葉を聞いて、思わず大きな声を出してしまった。

慌てて営業場へ戻ると、穏やかな滝下課長が珍しく厳しい表情をしている。

「山崎さん、書類ちゃんと確認してるよね?」

「え? はい」

石田さんにお願いする前に自分でも確認したけど、記入漏れも印鑑の押し忘れもなかったはずだ。

「これ、決済口座の番号が違うって」

「え!?」

「中山さん、ふたつ口座があって投信の決済で使ってるのはもう一つの方だった」

照会一覧を見せてもらいながら言われた言葉に、ハッとした。

確かに私は決済口座の確認を忘れてしまっていた。

いつもは必ず確認しているのに、今日に限って。

「幸い石田さんが注文書のデータをセンターに送信する前に気づいてくれたからミスにはならずに済んだけど、受け付けした時点でよく確認するべきだよね」

「はい。申し訳ありませんでした」

滝下課長の言う通りだ。

口座番号の確認は基本中の基本なのに……。

「とりあえず、すぐにお客様に連絡して訂正印もらわないと」

「はい」
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