白波銀行おひとりさま女子事情
第2話

#乙女ゲーム好きですが、なにか?



汐里(しおり)、好きだよ」

「私も、拓海(たくみ)くんのこと…」

言いかけたところで、拓海くんの指が私の唇に触れた。

「そこから先は言わないで」と瞳が言っている。

どうして?
どうして言わせてくれないの?
私だって拓海君のこと、大好きなのに―


―――ピピピピ

突然、静寂を破って電子音が鳴り響いた。

「――…なんだ夢かぁ…」

電子音の正体は、枕元に置いてあるスマホのアラーム音。

「……いいところだったのになぁ…」

思わずそうつぶやきながら停止ボタンをタップした。

ホーム画面には、さっきまで夢に見ていた拓海くんの画像。

昨日の夜も寝る前につい夢中でゲームをやってしまったから、あんな夢を見たのかな。

それにしてもさっきの拓海くん、カッコ良かったなぁ。

……なんて、夢の余韻に浸ってる場合じゃない。

今日は朝一番でお客さんのアポが入っているから、一本早い電車に乗って準備しなくちゃいけない。
< 74 / 135 >

この作品をシェア

pagetop