白波銀行おひとりさま女子事情
#デキるフツメンですが、なにか?
「水野さん、教育資金贈与口座の成約取れたんだって?」
自分の席で記入書類の点検をしていると、誰かに声をかけられた。
顔を上げると、目の前にはイケメン……じゃなくてフツメンのスーツ姿の男性。
「船堂さん、いたんですか?」
「いちゃ悪いのかよ」
「いや、そういうことじゃなくて」
フィナンシャルコンサルタントである船堂さんは、業務時間中は外訪していることが多くて、店内にいることはほとんどない。
今もてっきり外訪中でいないと思っていたから、いきなり声をかけられて驚いただけだ。
「一千万の大口契約、なかなかやるじゃん」
「ありがとうございます」
かなり上から目線発言な気がするけど、きっと誉められているのだろうと前向きに受け止めることにして、とりあえずお礼を返す。
「まぁ、川村さんは昔から取引深淵先で有名だからね。優しいし、契約しやすいよね」
「……そうですか」
なんか今の発言、棘がある気がする。
「でも、俺らの地区はこれで今月の目標百パーセント達成だな」
「そうですね」