白波銀行おひとりさま女子事情

「水野、必死過ぎ。別に俺何も言ってねぇじゃん」

私の動揺ぶりを見て、船堂さんが笑い出した。

墓穴掘ってどうする私!

「へぇ、でもそっか、水野さんはこういうのが好きなのか~」

そう言いながら不敵な笑みを浮かべた船堂さん。

よりにもよって船堂さんにバレるなんて、最悪。

「ちょっとお手洗い行ってきます」

船堂さんからスマホを返してもらって、私は逃げるように部屋を出た。

明日から船堂さんにネタにされたらイヤだな。

やっぱり電車に乗るまで我慢すれば良かった。

化粧室の鏡に映る自分の姿を見ながら、思わず大きなため息をひとつ。

お酒のせいで明日には記憶がなくなることを願おう。

軽く化粧直しをしてみんながいる部屋へ戻ろうとドアを開けると、誰かにぶつかりそうになった。

「すみませ……」

「水野さん?」

謝りかけたところで名前を呼ばれて顔を上げると、目の前にいたのは船堂さんだった。
< 85 / 135 >

この作品をシェア

pagetop