白波銀行おひとりさま女子事情

無言のまま部屋に戻ろうとすると、

「ちょっと待って」

突然、腕を掴まれて引き留められた。

「……なんですか?」

振り返った私に、「水野さんって、好きな男いるの?」突然船堂さんが尋ねた。

「え?」

それって、今ここで訊くこと?

っていうか、なんで船堂さんがそんなこと訊くの?

怪訝な表情になった私に、

「まさか、あのゲームの彼が好きとか?」

私の顔を覗き込むようにして、船堂さんが意地悪な笑みを浮かべて言った。

「……!」

「あれ、もしかして図星?」

船堂さん、酔うと急にSになるんだよね。

「ふ~ん。だから彼氏いないんだ?」

「そうですよ、どうせ彼氏いたことありませんよ!それがなにか!」

からかうように言われて、恥ずかしさでヤケになって思わず勢いでそう返すと、

「え、水野さんって今まで男いたことないんだ?」

驚いたように訊き返された。

また墓穴掘った私、逝ってよし。

「じゃあ、俺がなろうか?」

「え?」

なにになるの?ゲームのキャラに?いやいや、そんなわけないでしょうが!

と動揺のあまりひとりで心の中でノリ突っ込みをしていると。
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