白波銀行おひとりさま女子事情

「いつの間に異動してたの?」

「ああ、今年の春から海南エリアに異動になったんだよ」

「そうなんだ? 言ってくれれば良かったのに」

「まさか清水が美浜台支店にいるなんて知らなかったから」

ひとしきりふたりが盛り上がったあと、保険の勉強会が始まった。

「今日はありがとうございました」

勉強会終了後、片付けをしている舵原さんに声をかけると、

「こちらこそ、ありがとうございました。何か聞きたいことがあったらいつでも連絡して下さい」

そう言いながら名刺を渡されて、私も慌てて自分の名刺を渡した。

「汐里さんって、素敵な名前ですね」

「え、あ、ありがとうございます」

名前を褒められることなんて滅多にないから、嬉しいけど恥ずかしい。

「ちょっと、舵原! 仕事中にナンパしないでよ~」

後ろから聞こえて来た言葉に振り返ると水野さんが立っていて、いつの間にか会議室には私と清水さんと舵原さん、三人だけになっていた。
< 90 / 135 >

この作品をシェア

pagetop