冷徹の先にー司と紗奈ー
第1章 - 新しい世界
「ここがヤンキー高校か…」
紗奈は校門をくぐりながら、少しばかりの不安と好奇心を胸に抱いていた。周囲を見渡せば、男子たちの荒々しい声や、ド派手な髪型にバイク、身に着けたジャケットの背中には不良たちの証が描かれている。これが、噂に聞いたヤンキー高校だった。心の中で一つ大きなため息をつきながら、紗奈は足を踏み出した。
「自分がここに来るなんて…」
紗奈は、なぜこの学校を選んだのか、いまだに確信が持てなかった。元々、普通の高校に行こうと思っていたはずだ。だが、両親が新しい環境に挑戦するよう背中を押してきた。上京してきたばかりの彼女にとって、この学校はまるで未知の世界だった。
ヤンキー高校は、ただの不良の集まりではない。強い者が全てを握り、誰もがその力を手に入れたいと願っている場所だ。その頂点に立つ男、司の名前はすぐに耳に入った。学校内で知らない者はいない、誰もが畏れ敬う存在。彼がトップであり、この学校の支配者だ。
紗奈は、司がどんな男なのかを知りたくて仕方がなかった。噂によると、冷徹で非情、誰にも心を開かないタイプだと言われている。だが、紗奈には彼がどこかで恐ろしいほど魅力的だということがわかっていた。
彼のことを知ることが、ここで生き抜くための鍵になると思った。

初日の授業が終わり、校庭を歩いているとき、紗奈は偶然、司と目が合った。彼が立っていたのは、いつものように群れを作る男子たちの中ではなく、ひときわ目立つ位置にいる。一歩踏み出すたびに、周りの空気がピリリと張り詰め、誰もが彼に逆らうことができないことを感じさせる。
司は冷徹な目で、紗奈を見つめた。紗奈の足が自然に止まると、司がゆっくりと近づいてきた。
「お前、見たことがないな。」司は無表情で、冷たい声を放った。その声の圧力に、紗奈は一瞬言葉を失った。
「転校生です。」紗奈はその一言を絞り出すように言った。
司は無言でしばらく彼女を見つめていた。周りの空気がピンと張り詰め、男子たちが一歩引く。司が話し始めたその一言で、校庭の温度が一気に下がったかのように感じた。
「ここでは、弱い奴はすぐに消える。」司は冷徹な目で、紗奈を見つめながら言った。
その言葉が紗奈の胸に強く響く。だが、彼女は冷静を保ち、すぐに答えた。
「私は消えません。」紗奈はしっかりと目を合わせ、返した。
司はしばらく黙って彼女を見つめていたが、やがて冷たく笑った。「面白い。お前がどれだけやれるか、見てみることにする。」その言葉に、紗奈は心の中で確信を持った。これからは、ただ生き残るのではなく、必ず司を超えてみせると。
その後、司は無言で背を向け、仲間たちとともに去っていった。紗奈はしばらくその場に立ち尽くしていたが、心の中では彼の言葉を繰り返し、冷徹さを学ばなければならないという思いを強くした。
< 1 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop