求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

01 解散宣言

――――ああ。何もかも、失ってしまった。

 壁や床には無数に飾られていた絵や壺などの美術品が何一つなくなってしまい、がらんとしている邸の中を見回して私は思った。

 グレンジャー伯爵家の紋章は、柊の葉を持つ竜。玄関ホールの壁中央に飾られていた大きな金属製の飾りも、グレンジャー家が叙爵されて以来ずっと長い長い時間そこに居たはずなのに、既に取り払われてしまった。

 強いて言えば私たち家族三人に唯一残されているのはグレンジャー伯爵という爵位だけだけれど、領地すらもお金のために手放した名ばかり貴族なんて、世間から見れば何の価値もないだろう。

 まさか……こんな日が、来てしまうなんて。

 つい一週間前まで社交界デビューする日を、指折り数えて待っていた私に未来こうなると伝えたとしても、長い歴史を持ち潤沢な財産を持つグレンジャー伯爵家に、そんな事がある訳がないと笑って信じないはずだわ。

 そんなこと……絶対に、ある訳がないわって。

 ええ。実際にこうして、目の前にある出来事は、現実に起こった訳だけれど。

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