求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
「ああ。ウェンディ。戻ったか。これは、俺が国王陛下より賜った特殊な槍で、魔法を切り裂く効果を持っている。だが、アスカロンの結界を破ることが出来ないようだ……幼くとも神竜だから、仕方ないんだが。それに、槍の力を出し切って切り裂こうとすれば、アスカロンの身体が傷つくかもしれない」

 団長はいくつかの方法を考えていると言っていたけれど、これも、その方法のひとつだったようだ。

「あ……机に置かれた、この香炉は?」

「それは、魔術結界を弱体化出来る香炉なんだが、竜の結界にはあまり効果はなさそうだな……他にも結界を破れそうな魔導具を試してみたが……」

 団長は言いにくそうに言葉を濁し、彼が考え得るほとんどの方法を試し終えた後だと知れた。

「ああ……どうしよう……どうすれば良いの」

 私は絶望を感じて、脱力し膝を突いてしまった。

 私がやってしまった事自体は、手を滑らせてフォークを取り落としてしまうという小さなことだったかもしれないけれど、ジリオラさんから注意されていた事を軽く見ていた事は間違いない。

< 103 / 215 >

この作品をシェア

pagetop