求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 そして、私はこれからとんでもなく大きな責任を、何も悪くない団長に負わせてしまうことになる。

「ウェンディ……」

 団長は掛ける言葉がないと思ったのか、名前を呼んでからも何も言わなかった。

 お父様から取り残されて……アレイスター竜騎士団で働かせてもらって、本当に有り難かったし、彼には感謝しかない。それなのに、こんなにも大きな迷惑を掛けてしまうなんて。

 涙がこぼれそうになったけど、必死で押しとどめた。泣きたいのは、私ではなくて、閉じ籠もってしまったアスカロンなんだから……。

 ……そういえば……あの子は繭の中で眠れているのかしら。最近、昼寝する時は私の歌声を聞いてよく眠ってくれていた。

 不意にその事を思い出し、私は目を閉じて子守歌を口ずさんだ。

 それは、この事態をどうにかしようとした訳ではなくて、繭の中で私と同じような泣きたい気持ちになっているのであれば、少しでも安心して眠って欲しくて……。

 アスカロンはこれをしたくてこうなってしまった訳ではない。私も、もちろんそうだ。それなら……。

「……ウェンディ」

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