求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

16 報告

「ねー。ウェンディ。アレイスター竜騎士団辞めて、僕の恋人になってよ」

 私が何本か建物と建物の間に吊されている白いロープに、今日洗濯当番の新人竜騎士に洗って貰った洗濯物を干していると、セオドアが白いシーツの間から顔を出して言った。

「急に……何を言い出すんですか……」

 私はいきなり現れた彼に驚くと共に、呆れてしまった。

 アレイスター竜騎士団に雇って貰う時に、彼には口添えをして貰ったことには感謝しているけれど、時が経つにつれ無一文になった貴族令嬢が、どこまでやれるかを楽しむためにそうした事には気がついていた。

 おそらく……セオドアは、私が気がついていることに、気がついてはいないけれど。

「恋愛禁止という時代錯誤な規則だって、規則は規則だから、守らねばならない。ましてや、僕は副団長だからね。隠れてどうこうという訳にもいかない。ウェンディが僕と付き合うためには、君にここを辞めて貰う以外ないんだ」

 真面目な表情で言われてしまっても、彼のことを好きでもない私は、そんなことを望んでいない。

「……セオドア。私のことは逞しくて、好きではないんでしょう?」

 この前、食堂で会った時に、彼はそう言っていたはずだ。それに私とセオドアはお互いに好きという訳では、絶対にないのだから、恋愛禁止の規則には何も違反していない。

 だから、竜騎士団を辞める必要なんて、何もないはずだ。

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