求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
「まーね。わかっていない訳ではないと思うよ。わかってはいるけど、嫌なんだろうね。人の心なんて、良いと悪いで綺麗に割り切れてしまうものでもないからさー」

 私たち二人はそのまま騎士団に歩いて近付けば、男性の大きな声が聞こえてきた。誰かを怒鳴りつけるような、心がざわついてしまうような怒声だ。

「……ああ。やっぱり、責められてるね」

「大丈夫なんでしょうか?」

 私は心配だった。団長の持つ背景を知れば知るほど、彼は何も悪くない。

「ウェンディは気にしなくて良いよ。僕は言わなければこれはなかったことになるって何度も言ったし、ジリオラもそうしろって忠告したんだけど……起こった事には自分には報告義務があると、この前の事を報告書にあげたのはユーシスだからさ」

「この報告ってアスカロンのこと……ですよね?」

 この時、私の声は震えてしまった。だって、ジルベルト殿下にああして怒られるべきなのは、本当は私なのに。

「そうそう。なんなんだろうね。ジルベルト殿下に、怒られたいのかな?」

 冗談めかしたセオドアの言葉は、とても笑えなかった。だって、私のせいで団長が王族に怒られているのだ。

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