求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 遠目から二人の姿が見えたけれど、団長は何を言わずに、ジルベルト殿下の怒りを受け止めているようだ。

 ああ……団長はきっと、狡いことが出来ない人なのだと思う。

 セオドアやジリオラさんが言ったことには、きっと一理あると思う。知っている人が少ないのだから、全員で口を噤めば、それはなかったことになると。

 けれど、ルクレツィアの子であると同時に、ジルベルト殿下の竜ウォルフガングの子でもあるのだから、きっとすべてを言って知ってもらう事が正しいのだと思う。

 ……胸が痛かった。

 私があの時に仕事で失敗しなければ、団長がここでジルベルト殿下に怒られてしまうことはなかったのに。

「……そんな訳でさ。ユーシスは竜力で王族の血を引いている事が確定しているし、陛下も大事にしているようだ。だが、王族のように婚約者が居る訳でもない」

「……え?」

 隣にいたセオドアは急に何を言い出したのだろうと私が戸惑うと、彼はいつになく真面目な表情で話した。

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