求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 辛い事があっても、すべてを覆い隠して団長は笑っている。その事が……より、胸が痛かった。

「あのっ……私、セオドアとジリオラさんから、団長のお話を聞きました。私が迷惑を掛けてしまい、申し訳ありません」

 謝罪をしたいとこれまでずっと考えていて我慢できずにそう言えば、部屋の中には気まずい沈黙が流れた。私が不安に思い何か言おうとした時に、彼はようやく口を開いた。

「……君には関係ない。気にしなくて良い。いずれは、俺も結婚はしなければいけない」

 団長はさきほどまでの笑みを消し、アスカロンの頭をポンポンと叩いた。

「俺は仕事に戻る。もう一度言うが、君の責任ではないし、ウェンディは関係ない」

「……はい。わかりました」

 念押しされるように近付いた団長に言われ、私は俯いて頷いた。そして、彼が部屋を出て扉が閉まった音がした。

 団長はアレイスター竜騎士団の責任者で、私がしたことだって彼の責任になる。それは、理解出来る……けど……。

「っキュ! キューキュー!!」

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