求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

19 契約結婚

「……驚いた」

 言葉とは裏腹に驚いたような焦りもなく団長はそう言ったので、思わぬ事態に固まって居た私は慌てて彼の身体から降りた。

「もっ……申し訳ありません!」

 あの子、団長がここに居るってわかっていて、私をここに誘導したんだ!

 信じられない……あの子竜は悪戯好きだと思っていたけど、こんなことするなんて! 未だキュキュキュっと楽しげな鳴き声を出していた子竜へ、上半身を起こした団長は言った。

「……おい。ウェンディに帽子を返せよ」

 いつもより低い声で命令されて、子竜は急に高度を下げた。

「キュキュっ……」

 子竜も本能で強い者には逆らえないのか、申し訳なさそうな仕草で彼へと帽子を返した。団長から帽子を受け取ると、私はそれを被った。

 そんな隙に子竜は飛行訓練をしている子竜たちの元へと、逃げるように帰って行った。ここに残っていれば怒られると思ったのかもしれない。

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