求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 私だってこんな話を聞かされても、きっと困ってしまうと思う……けれど、現在実質的な雇い主であるこの人には、いつかは話さねばならない事だった。

「いえ。良いんです。その通りです……私の父は思い立ったら、他の事が一切目に入らなくなるんです。誰かを騙そうとするような人ではないんですけど、強く思い込めば誰かにすぐに騙されてしまって……我がグレンジャー伯爵家が無一文になってしまったのも、そういった訳でして」

 こんな風に家族の事情を説明することは情けないけれど、辞める経緯、つまり、父の暴走を説明するにはこうするしかない。私にとって良い父ではあるけれど、とんでもない失敗談なら事欠かない人なのだ。

「……君も、苦労したんだな」

 しみじみと言った団長に、私は泣きたくなってしまった。恥ずかしい……お父様、どうしてそんな突拍子もないことを思いついたの。

「だから、ここを辞めてから、仕事を探そうと思うんです。団長には私の紹介状を書いていただけら、とても嬉しいです」

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