求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
「俺と契約結婚をしよう。お互いに竜力を持つ貴族だし、婚姻の儀を隠れて済ませれば、それで正式に成立する」

「え……団長と、契約結婚……ですか?」

 団長は私の疑問に頷いた。

 お互いに貴族であればと彼が言ったのは、竜力を持つ貴族の場合、竜力を持たない平民と結婚したいと思えば、他の貴族に養子入りしてもらって、王に認められ竜力を持たないと結婚することが出来ないのだ。

 その理由は、胸に刻まれた紋章にもあった。

 ディルクージュ王国の貴族たちは、心臓の上に家紋があり、独身であれば紋章には一匹の竜が居て、婚姻の儀を済ませれば、それが二匹の竜へと変化する。

 だから、王侯貴族であれば胸の紋章をさえ見れば、その人が既婚者かどうかは判別可能なのだ。

「……知っての通り、俺はあまり好ましいとは言えない相手との縁談を王族より勧められている。出来ればしたくない。だが、既に誰かと結婚していると言えば、無理強いは出来まい。結婚しているのだからな。これは、一方的ではなく双方ともに得な提案だ。ウェンディも俺も、そうすれば助かる」

 それは、とても魅力的な提案だった。

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