求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

20 声

(……ねえ。怒ってると思う?)

(怒っている訳、ないよ! だって、ねえ?)

(ねえ? ……そうだよ! 喜んでいるんじゃない?)

(そうだよねー! 怒ったふりして、嬉しいと思ってるよー)

(そうだよー)

(気にしなくて良いよー)

(ねー)

(ねー。そうだよ。気にしない。気にしない)

(それより、また飛ぶ練習しようよー。明日はもっと遠くまで飛びたいんだ!)

(わかる。飛ぶのって、楽しいよね)

(楽しい!)

(楽しい楽しい)

(もっと飛ぼうよ)

(良いね)

(ねえねえ。藁の上から飛んでみる?)

(良いねー)

(良いね-)

 私は団長と別れ子竜たちが帰って来た竜舎へと戻れば、いつものように部屋に響くキューキューという高い鳴き声と共に、さわさわと聞こえてくる可愛い声に驚いた。

「……えっ?」

 これって、子竜たちが話している言葉が理解出来てる……って事よね? 飛行練習がよほど楽しいのか、寝藁のために置いてある藁を積み上げて高台を造ろうとしている子竜。

 これは間違いないと私は立ち止まり、楽しそうに遊ぶ子竜たちを見た。いつもと変わらない光景が、そこには広がっている。

 ただ……ひとつだけ、変わったのは、私が団長と結婚したことだけ。

 団長は竜力が強いので、子竜やアスカロンの言葉がわかるって言っていたけれど、私は彼と婚姻の儀を交わしたから……彼の家系となり竜力が上がって、聞こえるようになったの?

 まあ。凄いわ……嘘みたい。夢みたい。

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