求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 ライルは将来の目的があり辞めてしまったというだけで、何か問題があったという訳でもない。もしかしたら、久しぶりに顔馴染みに会いにグレンジャー伯爵邸へと遊びに来てくれたのかもしれない。

 けれど、父の書いた紹介状を手にした彼の同僚たちは、グレンジャー伯爵邸を既に去ってしまった後だった。

「まあ。ライル……ごめんなさい。我がグレンジャー伯爵家は……今、その」

 私が空っぽになってしまった邸の中に視線を向けてから言葉を濁し、口に手を当てて驚いていたライルを見つめた。

 貴方が居ない間に没落してしまったのよ……と、言葉にせずとも伝わるはずだと。

「いいえ! 違うのです。ウェンディお嬢様。実はここで働いていた同僚に偶然街で会いまして、グレンジャー伯爵家の事態を聞いたのです。そういうことであれば大変だろうと思い、僕で良かったら、お世話になっておりましたので、何か力になれればと……あの、旦那様はどちらに?」

 人の良いライルは周囲を見回し、ここに居るはずのグレンジャー伯爵家当主のお父様が居ないことに気がついたようだ。

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