求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 ジリオラさんには私の胸の紋章を見せない限り、団長と結婚していることはバレないはず……。

 子竜たちは食事が四回から、三回になり、そして、もうすぐ朝と晩の二回で良くなる。

 少しずつでも着実に成長していることを、嬉しく思いながらも、なんだかさみしいような……複雑な思いを抱いていた。


◇◆◇


「……ねえ。ウェンディー。僕と付き合うために、アレイスター竜騎士団、辞めようよ。その方が、楽だよ。僕が君の生活、全部の面倒みるからさー……もうこんな風にして、働かなくて良いんだよー」

 私が竜騎士団屯所へと定期連絡の書類を届けるために、廊下を歩いていると、どこからか暇そうな副団長セオドアが現れた。

 ああ……もしかしたら、この悪魔の囁きのような言葉も、団長が契約結婚を提案してくれる前では、聞こえ方が違っていたのかもしれない。縋るような思いで、彼の言葉に頷いていたかもしれない。

 けれど、今の私には団長という夫が居るので、断るしかない……それは、お互いに得になる契約結婚では、あるけれど。

 セオドアの提案には、今の私は絶対に頷けない。

「お断りします。私、働く事が好きなので」

< 142 / 215 >

この作品をシェア

pagetop