求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 ……今ではもう、売り払ってしまった、あの白いドレス。

「……ウェンディ」

「わ! どっ……どうしたんですか。団長」

 自分が失ってしまった物を思い出し涙ぐんでしまった私の視界には、やけに整った顔が覗き込んでいた。

「……どうした。泣いているのか?」

 心配そうな低い声に、私は上半身を起こしなんでもないと首を横に振った。

 団長は私が社交界デビューを前にして、断念したことを知っている……彼に可哀想な子だとは、思われたくなかった。

「いえ……すみません。白い服を見ていると、売ってしまった、白いドレスを思い出してしまって……けど、大丈夫です。私は今の自分に満足していますので……仕事を思い出したので失礼します」

 立ち上がりスカートの土を払うと何も言えないままで居た団長を置いて、私は竜舎へと逃げるように去った。



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