求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 ……団長に次はどんな要求をするつもりだろう。ジルベルト殿下には会ったことはないけれど、ジリオラさんやセオドアの話を聞いていれば、なんとなくその人柄を想像することは出来る。

 やはり、前に聞いたことのある怒鳴り声が聞こえて、私は慌ててそちらの方向へと向かった。

 見えてきたのは、神竜ウォルフガング! 美しくも雄々しい、ジルベルト殿下の竜だ。

 近づけないと思った私は石畳の廊下にある太い柱に隠れて、二人のやりとりを見守ることにした。

「……おい。ユーシス。見え見えの嘘をつくのではない。既に結婚したからあの縁談は受けられないとは、どういうことだ」

 そして、室内に入ることなく、金色の髪を風になびかせ、いきりたつ美形の竜騎士。胸に勲章を数えきれぬほどに付けた青色の軍服姿で、とても見栄えがする人だった。

 ああ……あれが、ジルベルト殿下だわ。第二王子の身分に違わず、とても王子様らしい容姿を持つ男性だった。

 ジルベルト殿下は王族だというのに、単騎でアレイスター竜騎士団まで来たらしくたった一人だった。

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