求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 竜力を与えるのも奪うことが出来るのも、ディルクージュ王国の国王陛下だけ。つまり、団長と私が婚姻の儀で夫婦として繋がり合えば、彼にだけは伝わってしまうのだろう。

「ふん。お前が口を割らぬというのなら、調べれば良いだけよ。たとえ誰だとしても、すべての口を封じることは叶わぬ」

「ジルベルト殿下」

「なんだ?」

「妻に手を出せば、俺は……何をするかわかりません」

 団長はこれまでジルベルト殿下に対し、臣下として礼節をもって接し、何を言われても我慢して来たようだ。

 けれど、これだけは言いたかったのか、決して引かぬと伝えるために、長い間ジルベルト殿下と見つめ合っていた。

「……はっ……おい。ユーシス、俺を脅しているのか」

「そんなつもりは毛頭ございませんが、妻を守るのは、夫として当然のことかと」

「……帰る。あの縁談はなしだ。王族とて既婚者に離婚しろとは、命令出来ぬ」

「ありがとうございます。せっかく良いお話を頂いたのに、お断りすることになり申し訳ございません」

「……白々しいことだ」

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