求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 なんだか、久しぶりに見た団長の笑顔。これって、何回目だっけ? ううん。これまで数え切れないくらい、私の前で笑ってくれてるってことだよね。

 ……嬉しいなあ。

「えー……二人とも、ここでこそこそと、何話しているの?」

「セオドア」

 私の背中側から声が聞こえたので、慌てて振り返れば、そこには半目になっていたセオドアが居た。

「あやしー……なんか、今二人の周囲に変な空気あったんだけど……」

 セオドア……いつから、ここに居たの? まるで、気がつかなかった。

「お前の気のせいだ。おい。勘ぐるなよ。ウェンディは俺の頼み事を、ただ引き受けてくれただけだ」

 団長は彼に近付いて珍しくセオドアの肩を組むと、私には手を振って早く行くようにと指示した。

「えー……あやしいよ。ユーシス。何か隠してる?」

「あやしい事なんて、何も頼んでない」

 捕まってしまう前に、私は早足で言い合う二人から離れた。セオドアったら、私たちをどこから見ていたのかしら?

 ……私たちは決して、そんな仲に見えてはいけない。

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