求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 アレイスター竜騎士団でアスカロンが育てられているのは、団長の竜ルクレツィアが母竜だからだ。それは、大昔からの決まりのことのようで、巣立ちまで近くに母の気を感じられるようにと配慮されてのことらしい。

 ……もし、この雌雄が逆であるなら、あの子は城で育てられることになっていただろうし、責任問題は殿下側になってしまうだろう。

 だと言うのに、ジルベルト殿下は団長に文句を言うばかり。

「まあ、おかしいけどね。おかしい事ばかりなんだよ。世の中は。大体ね。ウェンディも今日は疲れただろうから、帰って良いよ」

「あの……私、今夜はアスカロンの看病します」

 本来なら、徹夜で付きっきりの看病は、新人竜騎士が担当するのだけど、私も以前やったことがあるし……それに、あの子の声が聞こえるから、今ならば何をして欲しいのか理解することが出来る。

 あの時の私はそうしたいと思ったから、今夜それが出来るのなら、あの子にしてあげたかった。

「……私が何を言っても聞かないって、そんな顔をしているよ。ウェンディ。ここに来た時から、本当に逞しくなったね」

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