求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
「はー……そうかい。じゃあ、私は先に帰るよ」

「おやすみ。ジリオラ」

 キイっと扉が開く音がして、それでジリオラさんが出て行ったのだとわかった。この部屋には、団長が居るのよね……?

 それは、理解しているけれど、瞼が開かないし、身体が動けない。そうしたいと思って居るのに、まるで鎖で巻かれているかのように、身体が自由に動けない。

 どうしたんだろう……私は、これから、どうなってしまうの?

 衣擦れの音がして、団長が私へと近付いて来ていることがわかった。団長は温かな毛布をはがし、心臓の上、寝巻きの中、紋章のある部分の肌へと冷たい指が触れた。

 その瞬間、ふわっと身体が軽くなる感覚がして、私はやっと目を開けることが出来た。

「……だんちょう?」

「大丈夫か。ウェンディ」

 団長はすぐに手を戻し、私に毛布を掛けた。

「あの……これは」

「おそらくだが、俺と婚姻の儀を済ませ、力が定着するまでに、ウェンディの身体へ強い負担があったようだ……昨夜、陛下にお会いした時に聞いた。あまりにも竜力に差があると、こういう事が起こるかもしれないと」

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