求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
「眠っていたら、急に胸が苦しくなって、ウェンディがここに居るんだと不思議とわかった。だから、俺がアスカロンの部屋で倒れていた君を見つけたんだ。夫婦は互いの危機がわかるというが、こういう事だったんだな」

「ああ……そうだったんですね」

 私も竜力を交わした夫婦は、互いの危機がわかると聞いたことはあるけれど、それで自分が助けられることになるなんて思わなかった。

「ゆっくりと休んでくれ。君は苦労を知らない貴族令嬢だったというのに、働き者で……子竜守になって一番大変な時期も、弱音を吐くことなく、よく頑張ったと思う」

「ありがとうございます……けれど、私はもう……その、貴族令嬢とは言えないので。名ばかりなのに、気を使わせてしまって申し訳ありません。アレイスター竜騎士団で働かせて頂けているだけで、本当に感謝しています」

 労ってくれる団長の言葉は、正直ありがたい……けれど、私はもう子竜守を続けさせてもらうという生き方しか残っていない。

 出来の良い弟のリシャールが実業家となり、家の借金を返してくれれば、可能性はあるかもしれないけれど、それは何年も……下手すれば、十年も先の話だ。

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